第九回サービスデザイン研究会2017年2月1日

コンソーシアム第九回研究会は、平成29年2月1日に慶應義塾大学日吉キャンパスにて開催された。コンソーシアムに参画する6社の企業より9名、研究会を運営するKMDより計5名の教員、リサーチャー2名、15名程度の学生が参加した。商学研究科教授である吉田栄介による「コンセプトを実現させる管理会計」の講義があった。沖縄琉球リハビリテーション学院視察について特任教員である下竹原と原から紹介があったのち、奥出から今年度のサービスデザインコンソーシアムのまとめと次年度の展望について話された。最後に佐藤よりイーサリアム研究会の最終回について案内があった。

なんらかのコンセプトやビジョンを実現させるために、何が必要なのか。組織がなければ作らなければならないし、実現に伴う戦略も必要になる。これらを動かすための計画とマネジメントも必要になり、それこそが「管理会計」が担う部分である。管理会計とは、簿記や原価計算論などのコストマネジメントと、それ以外を担うマネジメントコントロールの二分野に分かれる。新規事業の事業計画書にはフルスペックで10種の項目があるが、全部揃っていればまず間違いなく銀行融資をもらうことが可能であるが、通常揃うことはほぼない。まず新規事業に必要なのは、コンセプトに伴う思い、それをバックアップするロジックやストーリーを展開し、それを実現させるための組織やマネジメント体制を整えることだ。外に出す情報である財務会計と、経営のための情報である管理会計は違うので、サービス構築するためには枠組みを心得て進めるべきであることが論じられた。

第八回サービスデザイン研究会2017年1月11日

コンソーシアム第八回研究会は、平成29年1月11日に慶應義塾大学三田キャンパスにて開催された。コンソーシアムに参画する8社の企業より21名、研究会を運営するKMD・商学研究科・SFC研究所より計7名の教員・研究員、リサーチャー2名、15名程度の学生が参加した。KMD特任准教授である原浩之およびリサーチャーの黒井俊哉による「未病と暮らし」の講義があった。奥出からMobility as a Serviceコンセプトの今期の実験の紹介があったのち、特任助教の佐藤からアーバンリゾートタウンとして見るシンガポールについて共有され、最後にSFC研究所研究員の斉藤より追加で開催予定のイーサリアム研究会について案内があった。研究会開催後には、新年会も兼ねた懇親会が開催された。

ウェルビーイングに生きるとは「ひとりひとりが夢・希望・目標を持つことができる」生活を送ることである。そのような状態を作り維持するために「悩みが共有でき、それを支えてくれる人がいて『ありがとう』が飛び交うまち」こそがウェルビーイングタウンであると述べられた。要介護や病気な状態になったとしても、自分ができるところを見て何かしら役に立つことが可能である。ハクジュプラザは地域の人々が集う社交場として機能しており、スタッフと来客者の間にできるゆるいコミュニティー(ソーシャル・キャピタル)が一人ひとり前を向いて生活することに少なからずつながっている。ますます高齢化が進んでいく日本にとって、このような支援サービスがあれば案外難なく日常生活を送ることができ、それこそがウェルビーイングであることが述べられた。

第七回サービスデザイン研究会2016年12月7日

コンソーシアム第七回研究会は、平成28年12月7日に慶應義塾大学日吉キャンパスにて開催された。コンソーシアムに参画する7社の企業より19名、研究会を運営するKMD・SFC研究所より計5名の教員・研究員、リサーチャー1名、10名程度の学生が参加した。KMD教授である砂原秀樹による「セキュリティー・プライバシー戦略」の講義と、SFC研究所研究員である斉藤賢爾による「ブロックチェーン/分散レッジャーのある都市構想」の講義があった。

サービスデザインする際に、全てのものを守ることは物理的に不可能であるため大事なのは「何を守って何を守らないのか」を決めることであり、そこで初めてどのようにセキュリティー戦略を構築することが可能である。そのためにはサービスが保有しているデータを一つ一つ理解することが大事である。また、情報やお金のやり取りを弊害なく自由自在にトランズアクションすることがイーサリアムやブロックチェーンのおかげで可能になってきた。カーシェアリングサービスでこのような技術を用いて秘密鍵を使えば、本人証明できて物理鍵が開くなどのことが可能になる。ウェルビーイングタウンにおけるパーソナルモビリティーの実現に向けての活動を支援するツールとしても使える。健康促進や維持の活動を支援する地域通貨としてブロックチェーンが活用することも考えられる。このあと3回のワークショップを通じて具体的にイーサリアムを扱って学ぶ研究会が設置された。

第六回サービスデザイン研究会2016年11月9日

コンソーシアム第六回研究会は、平成28年11月9日に慶應義塾大学日吉キャンパスにて開催された。コンソーシアムに参画する6社の企業より16名、研究会を運営するKMDより計5名の教員・研究員、リサーチャー2名、15名程度の学生が参加した。KMD特任准教授である井原慶子による「モビリティーとサービスデザイン」の講義があった。奥出からMobility as a Serviceコンセプトの今期の戦略の紹介があったのち、修士学生および特任助教の佐藤からアラブ首長国連邦ドバイにて開催されたGlobal Design Showでの成果展示について共有された。

今から130-40年程前に、身体が強くなれば心が強くなってそうすれば社会が荒れなくなって治安は良くなるだろう、というルーツから「スポーツ」の概念が生まれ、同時に自動車産業も登場した。ガソリンエンジンを流行させる手段としてフランスの新聞社が考えだしたのがカーレースであり、実はその次代を担う技術の革新を表現刷る場として機能していた。ルマンは世界で一番集客力のあるイベントとして認識され、沢山の観光ビジネスやサービスを生み出して経済効果を産んだが、それは政府・自治体・村民・モータースポーツに携わる人々(部品メーカー・エンジニア・メカニックなども含む)が工夫をして質の高いサービスを提供しているからである。これからのモビリティーには電気自動車の自動走行が活躍するであろうが、特に注目すべきは「ラストワンマイル」の領域だと述べられた。

第五回サービスデザイン研究会2016年10月5日

コンソーシアム第五回研究会は、平成28年10月5日に慶應義塾大学日吉キャンパスにて開催された。コンソーシアムに参画する7社の企業より15名、研究会を運営するKMD・商学研究科・SFC研究所より計6名の教員・研究員、リサーチャー2名、15名程度の学生が参加した。KMD教授兼研究科委員長である稲蔭正彦により「都市デザインとストーリーテリング」の講義があった。Urban Design および Retailing それぞれの学会での活動報告をKMD修士学生及び特任助教の佐藤からあったのち、未病産業創出研究の進捗が特任准教授の原とリサーチャーの黒井から共有された。さらに、奥出から今期の成果の肝となる「Mobility as a Service」コンセプトの紹介がされた。

ウェルビーイングリゾートタウンでは、訪問者は旅先でそれぞれの物語を構築するであろう。ストーリー性のある場所のデザインとして「テーマパーク」が挙げられるが、そのわくわくどきどきの演出をどのように設計するのかの3つの点(プレイフル・ストーリー・マジック)について講義された。これらのアプローチを駆使した都市のサービス例としてボストンのフリーダムトレイルや、ワルシャワの消失したはずの旧市街地、ドバイの人工島などが挙げられた。また、Urban Designの学会において議論される主な都市のあり方は「Sharing City」「Gaming City」「Open City」「Sensory City」などであることも共有された。

第四回サービスデザイン研究会2016年9月14日

コンソーシアム第四回研究会は、平成28年9月14日に慶應義塾大学日吉キャンパスにて開催された。コンソーシアムに参画する8社の企業より14名、研究会を運営するKMDより計4名の教員、リサーチャー2名、20名程度の学生が参加した。KMD特任助教の佐藤千尋より、既存のサービスが提供する価値と技術適応について講義があった。また、修士学生チームより指宿サービスデザインプロジェクト案を5つ提案があり、奥出よりそれらを総称するブランドコミュニティー形成構想についての共有があった。

あらゆるサービス空間において、そのサービスを成立させるべくサポートをする技術を適応させて実現することが重要である。あくまでも大事なのは「どのような価値を提供するのか」である。かつては鉄骨建築技術が提供した「仲間と一緒に歩く」経験ができるパリのパサージュなどから始まり、現在はモバイル情報技術を駆使した「いつでもどこでも車がつかまえられる」経験ができるサンフランシスコのuberなど、価値と経験を実現させるための技術適応こそが、サービスデザインをしていく肝となることが述べられた。

指宿サービスデザインのブランドコミュニティー形成としては、(1)帰ってきたらもう一度行きたくなる旅先、(2)訪問者自身が自分でバリューを作って得する旅先、(3)現地と訪問者が共に価値共創を行なう、(4)訪問者が旅先にアイデンティティが投影できてファンになる、等の具体例が共有された。

第三回サービスデザイン研究会2016年8月3日

コンソーシアム第三回研究会は、平成28年8月3日に慶應義塾大学日吉キャンパスにて開催された。コンソーシアムに参画する6社の企業より14名、研究会を運営するKMD・商学研究科・SFC研究所より計5名の教員・研究員、リサーチャー2名、20名程度の学生が参加した。商学研究科の准教授である齊藤通貴より、消費者行動とブランディングについて講義があり、白寿生化学研究所副社長でありKMD特任准教授の原浩之より未病産業の創出についての第一歩の共有があった。佐藤からは、指宿サービスデザインプロジェクトの案と、経済産業省後援の国際サービス学会2016へのポスター展示についての情報共有があった。

まずは、消費者行動とブランディング論およびサービスドミナントロジックの視点から、レクサスやハーレーデビッドソン等の既存のサービスやブランドのケースを見ていった。ウェルビーイングリゾートタウンを設計するにあたって、多様なプレイヤーが存在する地域の中でどのように一つのブランドコミュニティーを形成するかが課題であることを述べた。良質で高度なサービスを実践するには、現場の状況にあわせたスキルや知識を兼ね備えた人材を育て、意思決定の自由裁量を上げていく必要があるが、大規模な展開になるとなかなか難しい。リゾートタウンのビジネスモデルを変えていく必要があるし、価値共創が必要となってくる。

第二回サービスデザイン研究会2016年7月6日

コンソーシアム第二回研究会は、平成28年7月6日に慶應義塾大学日吉キャンパスにて開催された。コンソーシアムに参画する8社の企業より16名、研究会を運営するKMD・商学研究科・SFC研究所より計7名の教員・研究員、リサーチャー2名、20名程度の学生が参加した。今回より新規参加することとなった薬樹株式会社から挨拶をいただいたのち、指宿白水館社長でありKMD特任教授である下竹原啓高より、指宿を例としたリゾートタウンマネジメントについて講演をいただいた。さらに、奥出よりウェルビーイングツーリズムを展開する際どのようにサービスデザインメソッドを使うべきなのかの講義があった。

リゾートタウンマネジメントのケースとして、指宿メディカルツーリズム構想について共有された。現在の旅館経営のビジネスモデルは一泊二食の物見遊山団体客に対応しているのがほとんどだが、このままでは労働力不足で黒字倒産してしまうので長期滞在型にビジネスモデルをシフトしたい。指宿ではメディカルツーリズムをキラーコンテンツとして捉えており、メディポリス指宿という施設では、数週間~数ヶ月に渡る陽子線癌治療を受けながら、滞在中は豊かな自然がもたらす食とアクティビティーと温泉を楽しめる長期滞在を試みている。固定概念を捨てて新しいビジネスモデルにチャレンジすることこそが21世紀に生き残るためのマネジメント手法であることが述べられた。

第一回サービスデザイン研究会2016年6月1日

今年度の本事業によるコンソーシアム第一回研究会は、平成28年6月1日に慶應義塾大学日吉キャンパスにて開催された。コンソーシアムに参画する7社の企業より12名、研究会を運営するKMD・商学研究科・SFC研究所より計6名の教員・研究員、15名程度の学生が参加した。事業責任者である奥出による本コンソーシアムの概要や説明があり、各企業による自己紹介プレゼンテーションも実施した。経済産業省商務情報政策局サービス政策課長の佐々木啓介氏より本事業にむけた期待など挨拶いただいた。

「ウェルビーイングタウン」とは、年長者が健康長寿で元気に暮らし、自由に学び遊び、街の訪問者は自在に街を移動して得難い経験をすることができる、皆の気分が元気になる街を指す。本コンソーシアムではこのようなまちを設計することがゴールであり、今年度は鹿児島県指宿市にある指宿白水館をケースとして捉え、ウェルビーイングリゾートタウンとして、リゾート滞在型スパの基本構想を設計することを目標とする。そこでは具体的にどのようなサービスが実現されるべきなのかデザインし実践するために必要な手法や思考法を月一回の研究会内で講義・議論していくことが話された。